本日は午前中から月末に出品する「般若心経」の写経を仕上げていたが、一枚の写経を書き上げる事の大変さを実感する事となった。元々が筆は右から書き込むと乾ききらぬ筆跡がにじむ事から、左から書き込んだ方が自然であるが、この事を「般若心経」に当てはめると、御経の後ろから書き込むこととなり、なぜかしっくりとこないのでもある。

 右から書けば書き込んだ文字が乾くのを待つ必要もあるが、262文字といえども下手なりに真剣に書くとかなりの時間を必要とする。「こんにちはー」と、階下から聞こえる来客の声に中断され、間をおくと次の一字がおかしく、せっかく完成しても用紙がきれいにはがれなかったり、最後の署名に失敗したりと…

 過去にも多くの「般若心経」を書き入れたが、ただ黙々と書き込んだだけで、人に観てもらおうとは思っていないから、一字一句の良し悪しは考えもしなかったが、考えれば完成は至難の業と思われてきた。
 一方、今までの人生で、一番多く書き込んでいる筈の自分の氏名が思うように書き込めず、般若心経は心を込めても名前の書き込みでぶち壊しとなってしまいます。

 「とにかく、下手なんだから、何でも良いわ」と、展示する宿主の言葉を素直に受け止め、2枚の完成品が仕上がったものの、どちらも欠陥が気になり選択ができず、落款を押すことができず、恩師へ連絡して決めてもらう事にしました。

 「こっちが良いわ」と簡単に決まったが、私自身はもう1枚の方が気にいっており、「どこが違うんでしょうか」と訪ねると、「紙が違うわッ」との一言が。つまり、文字の良し悪しよりも、書き込んだ用紙の材質の良し悪しが優先して発表する書が決定したのでした。

 突然の訪問にも関わらず、恩師が表装する店に同行すると言われたために、「予定があります」とも言えず、急遽名古屋まで走る事となったが、仕上げまで2から3週間は欲しいとの店側に、一週間後には出品する予定から、何度も通いなれている恩師の言葉で間に合わせてもらえる事となりました。

 「先に料金を支払っておいてよ」との恩師の言葉に素直に随ったが、これが信用の一歩との事で、仕事を依頼しても完成品を取りにこない客も多いようで、金にならない作品を抱えて店が泣かされる例も多いそうである。
 さて、「帰りはどこかに寄るの?」と恩師の一言。「この後は○×の予定が…」とも言えず、「サービスの良い店をみつけました」と珈琲タイムの後に、弥富市役所まで走る事となりました。

 それにしても、私の書の腕は成長がみられず、4月に発表した書を恩師に見せたところ、「そりゃー、そっちの方が良いわ、そっちにするか」と言われ、「せっかく書いたんだから…」と決まった作品も、用紙の材質が決め手となっており、書道展に発表するレベルには達していない事の証でもあった。
                               6月16日の一言