家内は夕食の支度に忙しく、子供は携帯メールを見るのに一生懸命なため、誰も相手をしてくれず私の相手は犬しかおりません。ただし、犬も菓子がなければ真剣には相手になってくれず、毎度菓子を与えると体調を壊す(犬の方が気をつかってもらいます)と言って私が叱られるのです。

 さて、昨晩の話ですが、犬を相手に「お手」「お座り」「伏せ」と続けていると、犬の方が賢いのか、こちらが言いつける前にしつけた技を披露します。

 「おおしかモモちゃん」 「ワン」
 「お父さん、好きか?」 「ワン」
 「お父さん、…」 「ウッ…」 「嫌いか?」 「…」
 「お父さん、…、好きか?」 「…、ワン」

 こんなやりとりも限界があり、手元にあった紙で折り紙を見せますが、全く興味を示しません。そこで閃いたのが菓子を使った手品で、興味を示さなかった折り紙の中に菓子を入れてみると、びっくりした犬の視線が輝きはじめました。

 何も入っていない紙を一枚折り、裏返して一枚折り、何も入っていない事を犬に認識させながら、たたみ込んだ折り紙を置きますが、何も入っていないために興味はありません。そこで取り上げた折り紙に袖に隠した菓子を入れます。

 この折り紙を犬の前に置いても関心は示しませんが、犬の敏感な嗅覚から菓子の存在は察知して、目を輝かせています。そして、今度は折り紙を一枚ずつゆっくり開いていくと、何も無かったはずの折り紙の中から菓子が登場し、犬も首をかしげて見つめます。ここで「お預け」…

 今度は逆に、菓子の置いてある紙を折りなおしていき、完成する直前に菓子を袖に隠して犬の前に置くと、犬は菓子が入っていると信じて折り紙を眺めています。ここで「良し」とお預けを解除したものの、折り紙はぺラぺラで菓子はありません。

 人には見せられる代物ではありませんが、犬なら手品も十分通用します。ただし、犬の関心は手品ではなくあくまでも菓子ですので、匂いから菓子の隠し場所を探しますので「お預け」と遠ざけ、何度も繰り返していると頭が混乱したのか、私を無視して自分の寝床に戻っていってしまいました。

 「ちょっと待て」と引き止めて菓子を与えましたが、延々と続く私と犬のやりとりに家族も呆れ顔です。しかし、数多くの技は私が教えたもので、「良し…」でも菓子に近づくものなら、「よし…子さん」とか「吉…田さん」となる、意地悪な指示も多いので犬も私には真剣です。

 もっとも「お父さん、好きか?」で「ワン」と返事をする技は、裏技があり、私に内緒で長男が「お父さん、嫌いか?」で「ワン」と鳴くようにしつけており、相手を見て対応を変える犬の知恵にはびっくりです。久々の新開発となる手品も、菓子の匂いから悟られるので犬と私の知恵比べは当分続きます。
                                 2月12日の一言